21世紀COE「次世代ユビキタス情報社会基盤の形成」第一回設立記念シンポジウム@東大安田講堂
個人的に特におもしろいと感じたところだけキーワードを羅列してメモをそれにつけていくと・・・
■基調講演 「次世代ユビキタス情報社会基盤の形成」にむけて −21世紀COEプログラム発足にあたって− 坂村健 拠点リーダー
【フィジビリティ・スタディ】
試してやってみるということ。トータルアーキテクチャだからこそいろいろな技術がなし崩し的に広まる前に試してみるということをやる。
例えば今神戸でユビキタスIDタグを街のいたる所に配置して実証実験している。
【制度設計】
超巨大な社会規模の情報システム、例えばインターネットには全体責任を負う人がいない。昔はそんなことはなかった。電話のトラブルはすべて電電公社、など
→つまり、ベストエフォートの世界にならざるを得ない。End to End の保証は原理的に不可能。しかし、これは従来的公共システムと矛盾。
→「やってダメなら元へ戻せ」気軽に失敗できる米国とできない日本ということで難しい。
→「ベンチャラス」とにかくやってみるということが重要かつ必要になってくる。
→過度の責任を求めていては実現不可能なのだが、かといってそうした現状のシステムに縛られていると救われるチャンスもなくなる。
→ゆえに、技術設計だけではダメで、制度設計が必要。
■パネルセッション3「ユビキタス情報社会を支える技術基盤と応用」坂村健教授、大江和彦教授、越塚登助教授
・東大病院副院長でもある大江教授のお話が面白かった。
【電子カルテ】
2004年4月の医療現場の調査でカルテを電子化しているのは5%程度。東大病院はその中に含まれる
【患者の死因】
医師は死因の第三位(!)
【電子タグ】
−薬剤はバーコードを貼って管理しているが現場からは必要と思われる薬剤を多目に要求されるので結果として現場からは使われずに戻ってくるものがとても多い。そのたびにバーコードのシールを剥がす作業があり大変な労力を費やしている。
−使い捨てでない器具は135℃10分とかエチレンオキサイド50℃4時間などの滅菌処理があるので電子タグには過酷な環境。
【医療現場はむしろユビキタスを試してみるのに適している】
やってダメなら元へ戻せでは命がかかっている医療現場への電子タグなどユビキタスなシステムの適用は難しいかというと逆。
−プライバシー問題は既に患者にIDタグをつけて識別管理しているので抵抗がない。
−新しい医療技術開発を日々やっているのでさらにそこにユビキタス実験を入れてもどうということはない。
−もともと死因の第三位が医師なんだから実験で死人が出ても・・・(これは冗談かもしれないが、笑いをとっていた。ブラックだなぁ)
ユビキタス実験では一個でも失敗があったらダメということではなく、統計的に導入する前よりも何パーセント事故が減ったのかといった評価でやっていかないどダメだろう、と坂村教授からのコメントがあった。
・セキュリティについて越塚助教授のお話の中から
【電子タグの問題、悪意ある利用】
−機密性 あるIDに反応(ある人を特定してその人にのみ反応)する爆弾が作れてしまうかも
−完全性 入力情報の偽装、タグの付け替えて騙す
−可用性 クラッキングにより風呂から熱湯
→その他いろいろ恐ろしい話が出たが、技術的対処はどれもほぼ可能でできている。
【社会的仕組みの足枷】
セキュリティを確保するのに技術的にどうしたら良いかわかっているのだが、特許で囲われていてそれが使えないケースがある。
■クロージング 坂村健 拠点リーダー
【日本には軍事研究がない】
米国は戦争に勝つための強い力を求めて技術開発に莫大なお金を投入し続けている。
DARPAの貢献→インフラの創造、人材の育成、オープンなシステム
日本は軍事研究はないが国家安全保障は軍事だけではない。テロ対策や食品の安全性の確保など安全や安心の為のユビキタス情報社会基盤を目的とする。技術は手段であって目的が重要である。
第二回「自立的移動支援プロジェクト」が来月11月16日(火)14:00〜17:00に再び東京大学大講堂(安田講堂)であります。
http://www.iii.u-tokyo.ac.jp
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